霧たちのぼる、小出俣山(おいずまたさん)
九月です。夜な夜な肌寒く、寝室の窓を深更まで少しく開けていたのはほんの何日か前のような気がします。今はもう、廻し鍵をしっかりと閉めないと隙間から冷気がもぐり込んできてすぐ鼻かぜをひくような季節になってまいりました。八月の半ばから聞こえていた蟋蟀(こおろぎ)の鳴く声も心なしか夜寒をうったえているようでもあります。
きりぎりす 鳴くや 霜夜のさむしろに
衣片敷き ひとりかも寝む
藤原 良経
百人一首には秋を題材にした歌が多く採られています。この二百十日前後の秋雨の多い季節を代表するのは、以下の歌ではないでしょうか。
村雨のつゆも まだひぬ 槙の葉に
霧たちのぼる 秋の夕暮れ
寂蓮法師
猿ヶ京から見える谷川連峰の代表的な山、小出俣山(おいずまたさん)に霧が巻いているある日の写真です。
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